☆
「さわ子……おいっ! さわ子ったら」
清々しい朝日が差し込むベッドに大の字になって眠っている
さわ子をゆさゆさと揺する。
「う……ううん?」
よだれの垂れた眠気まなこでぼんやりとこちら伺っている。
大股開いてだらしない顔さらす様だからからカレシが出来ないんだぞ。
そんな思いがふと頭をよぎるが口が裂けても言葉にはできない。
「ほら起きろよ」
ゆっくりと起き上がった寝ぼけ眼のさわ子がジロリと健一を睨む。
「何、睨んでるんだよ。ほら」
そういってさわ子の目の前に香のよい湯気を立てるティーカップを置く。
ふんわりとした花の香のするアールグレイ、目覚めの一杯用に爽やかな口当たりに
してある。
「目が覚めたらそれ飲んで、風呂沸いてるから、入って来いよ」
「うう……あんたが無茶するから腰が痛いわよ」
前かがみになりながらさわ子が恨めしそうに言った。
昨日あれだけ腰を振ってペニスにむしゃぶりついたのだ、
無理もない。
「腰使いまくって喘いでたのはさわ子だろう」
苦笑にながら健一はそう答えた。
☆
「あ〜さっぱりした」
湯気を纏いながら実に嬉しそうな顔をしたさわ子がリビングにやってくる。
熱いシャワーを浴びてピンクに染まった頬、ツヤツヤと濡れ光る髪、美しいボディライン
やはり外見は様になる。
「ほれっ飯だぞ」
健一はバランスの取れたさわ子の肢体チラリと一瞥して
テーブルの上にきちんと並べられた朝食を指し示す。
「やった〜。やっぱり持つべき物は料理の上手なセックスフレンドね」
「はいはい」
ややあきれ顔の健一は手早く朝食の準備をしていく、
香の良いコーヒーとトースト、そして目玉焼き、瑞々しいサラダに使われているアンチョビなど手作りだ。
簡単に見えるが実に美味しそうな朝食である。
二人はテーブルに向かい合って座る。
「いつも食べてる軽音部だっけ? そこのお茶には負けるようだが」
「まあ食べてくれ」
「ふふっいただきます」
幸せそうな笑顔で手を合わせ。
さわ子はコーヒーで口を湿らせた後、上品な手つきでサラダを一口食べた。
「うふっむふふふふふ」
「何だよその笑い」
「は〜……やっぱり健のご飯が最高ね」
「そう? 一緒になれば毎日食べられるよ」
さわ子は健一のその言葉にプイッと顔を背ける。
そんなことは興味ないと言いたげだが、チラリと横目で健一の反応を伺ってたりする。
「う〜ん。やっぱりこれでご機嫌を取らないとダメかな?」
健一は台所の奥へ歩いて行くと、手にフルーツパウンドケーキを持って帰ってくる。
「ほらよっこういうの好きだろ?」
さわ子は黙ってそれを口に運ぶ、もぐもぐと目を瞑ってそれをゆっくり咀嚼した。
次に顔を上げた時には瞳をキラキラと輝かせなんとも幸せそうな表情であった。
☆
朝食を綺麗に平らげケーキをおかわりしたさわ子は先ほど出勤していった。
満足そうな笑顔がまだ脳裏に焼きついている。
「は〜……何がいけなかったんだろう?」
健一は深いため息をつく。
「やっぱり。やりすぎたのかな?」
大学時代の出会ったその時からさわ子は美しい女性だった。
初めて抱いた時、その体の素晴らしさに健一は夢中になってしまった。
見かけによらず繊細で、でも実は熱いハートを持っている、初心な女の子だった。
今でもそういった部分は色濃く残っている。
そんなさわ子も破瓜から半年たった時には、信じられないほどセックスが巧いレディになっていた。
健一が仕込んだのだ。
彼はさわ子の性感帯全てに徹底的に快感を叩き込み開発し、あらゆる技術を教えて、
性器が色づくまでを使い込んだ。
特に子宮には深いポルチオ性感を感じるよう、念入りに仕込んだ。
結果、さわ子は素晴らしい感度の床上手になっていた。
健一はただセックスが好きというわけではなく、さわ子と気持ち良くなるのが大好きだった。
快感に打ち震えるさわ子をとても可愛らしいと思っていた。
性行為だけではなくデートだってそれなりに気を使って楽しませたつもりだったのだが。
ある時からさわ子は急につれなくなり、彼のことを、ただのセックスフレンドだと言い出し始めた。
きっとやりすぎてしまったんだろう。所謂、がっついて嫌われたというやつだ。
だがさわ子は健一との関係を辞めようとはしなかった、その理由はわからない。
肉体関係自体は最初に関係を持った時からずっと続いている。
こう言ってはなんだが、お互いに非常に充実した性生活といえる状態だった。
さわ子が健一のことを軽蔑している様子はない、しかし健一はカレシの座から転落してしまった。
そのことは、どうやら間違えないようである。
初めて愛し合った時は、決してこんな感じではなかった。
そう……初めてのとき。お互い教員を目指して免許取得を目指していた時。
お互い若かったあの時代。実習生最後の日だったあの日は。
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