「実習……お疲れ様でした」

「お疲れ!」

 チンッとグラスが軽い音を立てる。

 洒落たジャズバーで乾杯をする二人、さわ子と健一だ。

 今日は教育実習最後の一日の終わり、二人っきりの祝い酒と言うところだ。

 調度演奏が終わったところで、客同士が思い思いの会話で盛り上がり
いたるところでグラスが音を立てている。

 若い客の多い活気のあるお店だ。

「今日はヘドバンしなくていいのか?」

 健一の突然の言葉にさわ子は一瞬何を言われたのか理解できなかったようで、キョトンとした顔をした。

「ふふふっあははは。こっここでヘドバンするの?」

 その言葉を理解した後。少しツボにはまってしまったのか愉快そうに笑った。

「ははっやっぱりさわ子は笑うと可愛いよ」

「なんか緊張してたみたいだからさ、一発笑いをとってみた」

「えっ?……うん、ありがとう。男の人と二人っきりでこういう所……初めてだったから」

「ふ〜ん、そうか? 意外だな」

 美人なのにを付け加えそうになったが寸でのところでそれを飲み込む。

 なんとなく理由が想像できるだけに言わない方が得策だろうと健一は判断した。

 そんな機転が効いたのか、今日は妙にお酒が美味しく感じられる。
さわ子も同じなんだろう、楽しい会話と共にグラスが次々と空になった。

 ほろ酔い気分になったところで健一はそっと切り出した。

「さわ子……今日はさわ子を帰したくない」

 そっとさわ子の手に指をからませて言った。

「あっ! えっ? ええっ!!」

 健一の提案にさわ子は慌てだす。

「んっ?」

 別にこういう話を切り出したとしてもそれほどおかしくはないはず。
付き合いだってそんなに短いわけでも軽いわけでもない。

 お互いに特定のパートナーがいないのだからそう言う事があってもいいかな
などと健一は思っていた。

「どっどうしよう? えっと……あの」

「ははっ……慌てなくていいよ。ちょっと外の空気吸って来ようか?」

 そう言って健一は手早く会計を済ませてしまう。

 健一は慌てるさわ子をリードしてやりながら、二人連れ立って店を後にした。



「おおっ! 良い空だな」

 外に出てみると空は雲ひとつ無く、星空がとても美しい。

「…………」

 さわ子からの返事は無い。

 彼女を見てみると難しそうな顔をして考え込んでいた。しかし見たところ嫌そうな感じではなかった。

(脈はありそうだが、以外に初心なんだな)

 こう言った女の子を見るとつい悪戯して見たくなってしまう
そっとさわ子の肩に手を当てると腰の裏をさすってみる。

 すると少し恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見上げてくる。

(おっ! 嫌がらないな……いけるかな?)

 良い感触だ。この段階で嫌がられてはその先は難しい。

 健一はすばやくさわ子を後ろから抱きしめるとそっと下腹に手を当てた。

「やんっ! ダメだよ」

「緊張してるみたいだからお腹さすってやるよ」

 そういってスリスリとへその下を撫ぜる。

「もうっ……なあに? それ」

「ふふっ調子出てきたじゃないか、ちょっと楽にして考えてごらん」

「うっ……うん」

 すりすりと布の擦れる音が鳴る。

 その音が急に止まると健一の指がさわ子のへその下にゆっくりと沈んでいった。

「あっ!」

 その指が根元までお腹に沈み込むと、さわ子が背筋をピクンと伸ばす。

「あっ! 今トクンッて」

「お腹の底で鳴った?」

「う……うん」 

「そっか」

 健一は再びへその下を優しく撫ぜはじめる。

「変なマッサージ……お腹痛くなっちゃったわよ」

「どこが痛いかわかる?」

「ええっ? おしっこたまるところかな? 健が押したりするから」

「本当にそこ?」

 してやったという顔で健一が聞いてくる。

「そういえば……少し奥でちょっと……上?」

 しばらく考え込んだ後

「あっ!! ああっ!!」

 と声を上げる。

「おっ! 気が付いたか」

「なっ何をしたの?」

「さわ子が正直になるツボを押したの」

 ニッコリと微笑んでそう答えた。

「どんな感じ?」

 優しく下腹をさすりながら健一がそう訊ねた。

「うう……じんっじんって……甘痛くなってるよ」



 顔を桜色に火照らせて、さわ子が答える。

「これってやっぱり?」

「うん、女の子の大事なところだよ」

「そこはね……好きな人が相手じゃないと疼いたりはしないんだよ」

 さわ子はしばらく恥ずかしそうに目を泳がせてから

「本当に?」

 そう上目遣いで聞いてきた。

「もちろん」

 ゆっくりと下腹を撫ぜながら健一はそう言った。

「私……健のこと嫌いじゃないよ」

 さわ子がポツリとつぶやく。

「俺はさわ子のこと結構好きだよ」

「痛くしない?」

 そう質問したさわ子の瞳は決意をにじませた乙女のものだった。

「しないよ。優しくする」

「身体綺麗にしてからしたいの」

「うん、近くに感じの良いホテルが有るんだ。そこのバスは夜景が見えてとても素敵だよ」

「私、見かけほど上手じゃないかもよ」

 ちょっとだけ不安そうに言った。

「さわ子が好きだから抱きたいの」

 健一がぎゅっとさわ子を抱きしめる。

「お腹痛い……」

「このまま帰っても眠れないよ」

「優しくしてよね」

 健一は返事をせず。そっとさわ子の唇を奪った。

次へ

小説Topへ