処女は媚毒に犯されて
菫は自室で、テーブルに置いたその小瓶を眺めていた。手のひらに収まるほどの小さな大きさ、その中に丸い丸薬が２０錠ほど入っている。そのまま小物にしても良い位の、綺麗なクリスタルガラスの瓶だ。
その瓶をじっと見つめる。
どこをどうやって通って自宅のマンションまで帰ってきたのかわからない。目の前に薬の入った小瓶がなかったら、あの店に行ったことはきっと夢だったと思ったに違いない。
そのくらいあの地下のお店は、現実から隔離されたような不思議な空間で、そこにいた魔女はこの世の人には思えなかった。現実感がまるでないのだ。
恋なすの霊薬。魔女はこの薬をそう呼んだ。
薬の成分的には、女性の生理を整え女性器自体を良好に保つ生薬に、排卵誘発、ならびにその際の痛みを緩和する麻酔の成分がわずかに入っているそうだ。その麻酔の成分が恋なす。つまりマンドラゴラの実なのだという。
（それって……毒じゃないの？ 飲んでも平気なのかな？）
マンドラゴラはかなり強力な薬物であったように菫は記憶している。麻酔としても危険性が高くあまり使われないのではなかったか？
魔女が言うには、この薬自体は普通の漢方薬程度の代物らしい、しかし天想寺玲愛はこの薬は本物の魔女の大釜で煮られた魔法薬であるとも言っていた。
なぜだろう？ なぜ自分はあの魔女を”本物”だと思うのだろう。
あの天想寺玲愛という女性はきっと”本物”の魔法使いだと思う。すんなりとそんなことを信じてしまう自分が不思議だった。
瞳？ あの瞳なのだろうか？ そう言えばあの瞳はなにか妙だった。
『うちのお店はね、真摯に神秘を求める本物のお客様に限って、初回の御代は頂かないわ』そう言って魔女はこの薬をくれた。
自分は神秘をそこまで真剣に求めていたように見えたのだろうか？ ただちょっと自分を変えてみたかっただけだ。ちょっとだけ、ふしだらな女になってみたかった。それだけだったはず。
そっと小瓶に手を伸ばす。ガラスのキャップは……意外にすんなり、音もなく外れた。薬の臭いは……思ったより臭くない。蜂蜜とハーブの匂いだ。
胸がドキドキする。この薬を飲んだらきっと自分の何かが変わってしまう。そんな予感がする。でもまるで操られたように、瓶から一粒取り出して。――そして
丸薬が喉をコロコロ転がって、みぞおちあたりですっと感触が消えた。――ゆっくりと一呼吸吐く――じんわりと薬が溶けていくに従い徐々に
ふと、心臓がトクッと鳴った。そして同時に菫にしか聞こえないトクンッと言う音がへその下から鳴る。
媚薬の毒が溶けた熱い血潮が、菫の使われていないお腹の底の動脈に押し寄せる。
その血がコツッと何かに当たった。菫の子宮の動脈は閉じている。彼女は知る由もないが、生まれつきそうだった。
菫は子宮で物事や男について考えない、女のそれに引きずられたことがない女性なのだ。
だから菫は冷静な女性で、周囲からもそう思われていた。異性交遊に落ち着きがある。浮ついた話が無い。良い娘。そんな彼女だからこそ、ふしだらな何かに憧れたのかもしれない。
コツンッ。もう一度、毒をたっぷり含んだ血液が、子宮への閉じた扉をこじ開けようとする。この毒が子宮にまわったら……きっと自分は淫魔のようになってしまう様な気がする。でももう引き返せない。
コツッ！ コツッ！ コツッ！ ノックは止まらない。
菫は目をつむってそっとお腹の底の筋肉をゆるめた。
ドクンッ！
「あっ！！！」
女を狂わせる猛毒を帯びた血液が処女の子宮に襲いかかる。
ドクッ！ ドクッ！ ドクッ！ 力強い脈動が女の芯を熱くする。
「あっ！ あっ！ やだっ！ 止まらないよぉ」
熱い血潮が次々と子宮になだれ込んでいく、毒が染みて子宮がキュンキュンする。
「はっ！ はっ！ はっ！ あうぅぅぅ」
媚薬の毒が性器の細胞の一つ一つに入り込んで、自己主張をしてこなかった沈黙の臓器を、饒舌に女の欲望を語る、はしたない肉壺に造り替えていく。
思わず自分の胸を強く抱きしめて、そして驚愕した。
「嘘っ！ 嘘っ！ おっぱい！ やぁぁぁ！！！！！」
自分でも気が付かないうちに毒はすでにオッパイの芯まで犯していた。
胸の中に網目状に張り巡っている、乳腺の一本一本までもが狂おしい疼きを伴って毒に犯されている。
普段は意識しない乳腺の形まではっきりわかる。
その疼く胸を抱きしめて変形させる。そうするとまるで詰まり過ぎた果汁のように、甘い性感があふれてくるのだ。
「あんっ！ くふぅぅ はっ！ はっ！ ううぅぅぅ」
甘く痺れる自分の体を菫はギュッと抱きしめた。肉体の奥底から湧き上がるように、疼きが混み上がってくる。この柔肉をめちゃめちゃになるまで揉み解して、ぐちゃぐちゃになるまで●を掻き混ぜてほしい。そんな欲求に脳が染まる。
甘く見ていた。これではまるで”猛毒”だ。そしてその”猛毒”が女体の最大の急所へと触手を伸ばしてきた。
この毒は本来この最大の急所を犯すための毒だったのではなかったのか？ ふとそんな思いがよぎる。
――その急所――自分の卵巣、それが蛇に丸呑みにされる。そんなイメージが菫の脳裏をよぎった。
次の瞬間。ズグンッと重い疼きがお腹の底で起こった。そして子宮を火照らした毒はたったひと飲みで卵巣を犯しきった。
「えっ！ なに！？」
じわっと卵巣に毒が染みる。
「嫌だ！ 嫌だ嫌だっ！ なにこれ！！！」
ムズムズムズムズムズムズしはじめる。卵巣が耐え難い痒痛感を伴って疼きだした。女性ホルモンの生成器官が浸食されていく、卵巣が女性ホルモンを漏らしながらキュンと疼く。
ダダ漏れになったホルモンが自分を淫魔に作り変えてしまうのではないか？ そんな思いが頭をよぎった。
それよりも……これは弾ける。きっと弾けてしまう。いつもより数十倍の強さだが、この痒痛感には覚えがある。これは排卵の前兆だ。
思わず身構えてしまった。なぜなら月に一度のこのイベントは毎回、耐え難い苦痛をもたらすからだ。少女の時に泣いたことさえある。自分が女であることを呪ったことさえあった。それほどに菫の排卵痛は激しい痛みを伴うことがほとんどだった。痛みと痺れにうずくまってしまうほどそれは強烈なのだ。
「はっ……はっ……はっ……すぅぅ……はっ」
痛みに備えて呼吸を整える。直後。毒に犯された卵巣はあっさりと弾けた。
「あっ！」
パチンッとお腹の底で何かが弾けた。続いて頭の中で同じように何かが弾けた。
「あああああああ！！ あっ！」
パンパンパンと断続的に卵巣が弾けて、電流のように何かが背骨を駆け上って、脳で再度火花を散らす。
「あっ！ あっ！ あっ！ あっ！ あんっ！ あんっ！ きゃう」
刺激が走るたびに声が出てしまう。信じられないことに排卵の激痛が性感におき替わっているのだ。パンと弾ける一つ一つがまるでクリトリスオナニーの絶頂ほどだ。それが連続で起こり。
「嫌だぁ……嘘ぉ……止まらないよぉ！！」
ぎゅうと歯を食いしばって、沸き起こる排卵アクメを堪能した。クリトリスオナニーでは得られない奥深い性感を噛み締める。
（嫌だ……蕩けちゃいそう……子宮……痺れちゃってる）
子宮が甘く痺れて、ねっとり濃い子宮頸管粘液をドプリと吐き出した。
身体から汗が噴き出して、じっとりと濡れている。しかもその汗はひどく甘ったるい匂いがするのだ。でも汗の匂いなどまだましな方だ。耐え難いほど恥ずかしい悪臭を放っているのは、三十路の花園だ。膣が馬鹿になったのではないかと思うほど膣フェロモンを分泌して、めまいがするほどチーズ臭い。そしてほのかに香るヨーグルトの様な酸っぱい香りは、複雑な形状の膣襞の間にたまった恥垢の香り。菫の処女臭だ。
性経験の浅い若い男がこの部屋の空気を吸引したら、フェロモンだけで射精してしまうだろう。
子宮、膣、卵巣、陰唇、今まで使われてこなかった器官の血管が全開になり、凶悪なポンプの様になった心臓から、次々と猛毒を帯びた血液が送り込まれる。
膣洞がまるで別の生き物になった様に、ヒクヒクと蠢き、むせび泣くように淫蜜をしたたらせ疼いている。
辛い、かなり辛い。
一人で薬を飲んだのは失敗だった。正直、今、目の前に男がいたのなら、どんな不潔なブ男だったとしても、処女を介錯してもらっただろう。
自分の手を見つめる。もう頼りになるのはこの右手だけだ。細い指、頼りないけど、これならあんまり怖くない。
すっと膣口に指をあてがった。そこはぱっくりと口を開けている。粘液を指にまぶさなくても、吐きかけられる愛液だけで指はねとねとになった。
ゆっくり慎重に、柔らかすぎる肉を傷つけないように慎重に進んだ。
第二関節が沈み込んだあたりで膣が急速に狭くなる。ドーナツ状の粘膜が行く手を阻んでいた。
環状処女膜。コリッとした粘膜の壁は中央に小さな穴が開いている。指一本がかろうじて入るかと言う小さな穴。そこより先に異物や指を挿入した経験は菫にはなかった。
オナニーは人並みにする。とは言うものの、菫はクリトリスとラヴィアをいじくるだけのソフトオナニー派だ。
性器自体には、菫の性の歴史がしっかりと刻まれている。四半世紀以上の性欲を処理してきたクリトリスは大き目で、ラヴィアは小陰唇が伸びて黒ずんでいる。だが膣口はまばゆいばかりのピンクで、明らかな未使用地帯といった趣だ。
中指でためらいがちに処女膜をなぜ回す。親指がクリトリスをいじるが、とてもそれだけでは満足できそうにない。
指をそっと奥へ差し込む、チュッと小さな音を立てて、中指が狭い処女膜を潜り抜けた。
粘膜の輪っかが輪ゴムのように指を締め付ける。内部はホコホコに温かく、恥ずかしいほどに濡れていた。ねっとりとしたツブツブヒダヒダが指に絡み付いてくる。そこはマシュマロのように柔らかく、狭い膣洞が時にキュッときつく締め付けてくる。
中指など性感を感じる部分ではないが、それでも膣内の感触は甘美で心地良い。
（すごぉぉい……柔らかくて。動きも感触もこんなに複雑なんだ）
ヒダヒダの一つ一つが柔らかく複雑なのは、熟れこんできた女性の性器の特徴で、少女の膣はもう少しつるり滑らかで色もピンクなのだが、菫の膣は誰にも触られることがないまま、はしたなく熟れてしまっていた。
ちゅくちゅくと粘膜の擦れる音を立てながら、中指の腹で膣の壁を摩擦してみる。
（あっ……あはっ……わかる。コレ、ちょっと気持ちいい）
探るように少しずつ、ゆっくりと。それは児戯に等しいオナニーだが、確実に女の喜びを掘り出していく。
指は少しずつ奥へ吸い込まれていく、メチャメチャに捏ね繰り回したい部位はもっともっと奥底。指では決して届かない、そう子宮なのだが、届かないとわかっていてもそこへ惹きつけられてしまうのだった。
秘部からの甘い刺激で頭がぼうっとする。脳を埋め尽くすピンクのモヤモヤ。それがやがて少しずつ像を結んでくる。
浮かぶは男性の顔だ。
「ダメっ勇人君……中だしはラメらからねぇ……あうっ！」
「えっ！ 勇人君？」
掴原勇人、菫の仕事先でアルバイトをする学生だ。自分に優しい、ちょっといい感じの男の子。その勇人に膣内射精されるイメージが突然わいたのだ。
イメージと共に沸き起こる、擬似的なペニスの感触。一度空想がわいてしまえば、あとは爆発するように、妄想が菫を浸食する。
「勇人君！ 勇人君！ ダメだよ！」
優しそうな青年のイメージが明確になるごとに子宮がキュンと疼き膣洞がヒクついてくる。ギアを上げたように気持ちよさのボルテージが上昇してくる。
次の瞬間、内臓を支える横隔膜がヒクリと痙攣して、信じがたい異変がお腹の底で起こった。
ズリッズリズリ……ズリズリズリ。じわりっと熱い塊が降りてきた。
「やっ！ 降りてる！ これっ！ 降りてるの！ 嫌だ！ 嫌だ！ ダメ」
「あっ……ああ……あああああ……うそ……」
指先にコリッとした吸盤の様な粘膜が当たる。
「勇人君の中だし欲しくって……子宮……降りちゃった」
ジンジンに火照った子宮がずりずりとずり下がり、ついに子宮口がかろうじて指で触れる位置まで、降りてきてしまった。
セックスの経験が豊富な女性の中にフィスト気味に手を陰部へと挿入し、指先で子宮口を転がすという、上級者向けの自慰があるそうだが、初めて指挿入を行った処女なのに、子宮に指が届いてしまった。
震える指先でそっと吸盤状の熱い肉塊を転がしてみた。
コリッ！
「あっ！ ひぐぅぅ！ かはっ！」
たった一転がしで目の前が真っ白になる。
「イクッ！ いっちゃ……うっ！ コレっ！ イッてる」
コリ！ コリッ！ コリコリッ！ 転がすたびに数段跳びで階段を駆け上がるように。一気に絶頂に達する。
「あっ！ イッてるの……止まらない」
ドプッドプッドプッと、吸盤が濃い子宮頸管粘液を、まるで壊れた蛇口のように吐き出しはじめる。粘っこい粘液が指先に噴きかかる。
性交も知らず、異物さえ咥え込んだことの無かった、生粋の処女。
性感に対して耐性がほとんどない生娘にとって、最も深い性感と言われるポルチオ性感による絶頂は、まさにすべてをさらっていく津波だった。
「たっ助けて！ らめぇぇぇぇぇ！」
蒸れたチーズの様な異臭を放つ、白濁した
そして忘れがたい女の喜びは、一人の男の顔を菫の脳内に焼き付けた。
「勇人……くぅぅぅん……」
涙とよだれと鼻水をこぼして、だらしない顔で菫がつぶやく。
魔女の秘薬はお淑やかで不器用な一人の三十路処女をはしたない淫魔へと造り替えてしまった。
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