秋の午後、空は気持ちよく晴れて、気温は暑くも無く、寒くも無く。
ティータイムにはもってこいの、
そんなある日の音楽室、桜高軽音楽部は今日も平和そうだったのだが……
「はぁぁ〜〜…… はぅぅ〜〜」
リードボーカルにしてギター担当、平○唯のやる気の抜けたため息が響き渡る。
「なんか今日の唯先輩、完全に魂が抜けてますね」
一年後輩のサイドギター中○梓が心配そうにつぶやいた。
「どうした〜唯、学祭終わって、だらけたい気持ちもわかるが
そろそろ気合入れていくぞ〜」
ドラム担当で部長の田○中律が元気な声で唯を鼓舞する。
「そろそろ練習もしっかりやらないとな、ほらはじめるぞ」
部一番の真面目キャラで、スラリとしたスタイルの良い身体が特徴の
秋○澪がベースを抱えてセッティングを開始する。
「うい〜〜そうだね練習しないとね」
唯がテーブルを離れてギターに向かうが、ふにゃふにゃとだらしない動きをしている。
とてもまともなプレイは期待できそうに無い。
ふと、唯が立ち去った後のテーブルに奇妙な違和感があるのをみんなが感じる。
その正体に一番最初に気が付いたのはキーボードとお茶担当の琴○紬だった。
「あら? 今日のお菓子はお口に合わなかった?」
その瞬間みんなの視線がテーブルの上に集まる、
テーブルには半分以上食べ残されたケーキがある。
唯の座っていた場所だ。
「お…… おいおい、ま〜た風邪か? 今日はどうしたんだよ」
律が心配そうに唯の顔を覗き込む。
「たいしたことじゃないよ〜」
そう言いながらふにゃふにゃとへたりこんでいく
澪が唯に近づいておでこに手を当てながら
「う〜ん…… 熱はないみたいだな」
といってへたり込んだ唯をテーブルに戻して座らせる。
「これは重症っぽいですね」
梓がチューニングの手を止めてテーブルに戻る。
練習どころではないことを感じているようだ。
「う〜ん。そうっぽいな、唯いったい何があったんだ?」
お茶担当の紬が、すばやくティーセットにお茶を注いでいく
唯がゆっくりとした動きで注ぎたての紅茶をすする、
他のメンバー達も唯を見守りながらカップに口をつけた。
「実は憂に彼氏が出来てね。最近家でエッチしてるんだよ〜」
唯がポツリとつぶやいた。
「な〜るほどね〜妹の憂ちゃんが彼氏とエッチしてるのか」
律がうんうんとうなずく。
「って!! ええ〜!!」
軽音部一同がおもわずお茶を噴出した。
「あの憂ちゃんが〜!?」
憂はとてもよく出来た唯の妹で、どじっこで頼りない唯と違って
実にしっかりとした女の子だ。
控えめな印象の子ではあるが美人で社交的な子なので
彼氏の一人二人いてもおかしくはないのだが。
「あの憂ちゃんに彼氏か〜、で、どんな彼なの?」
いち早く冷静さを取り戻した澪が興味しんしんといった感じで聞いてきた。
「えへへ、とってもよく出来た彼なんだよ〜。優しいし、勉強は出来るし
バスケも上手で大会とかで良い成績のこしたり、憂ととってもお似合いなんだよ〜」
唯が実に嬉しそうに言った、妹と大の仲良しで信頼しあっている姉妹だ
妹の彼が良い人物だと自分のことのように嬉しいのだろう。
「なんでエッチしてるってわかったんですか? もしかして覗いたんですか?」
梓がネコミミが付いていればピンと立っていそうな顔で聞いてくる。
「いやね、せっかく憂の彼氏が家に来てくれたんだし、たまには
お茶くらい入れてやらないとな〜。なんて思ったんだよね」
「ふんふん」
いつの間にかみんなが瞳をキラキラさせながら唯を見ていた。
「それでね、おこづかいをはたいて一番高い玉露を買ってきて淹れたんだよ。
まあ淹れ方はよくわかんなかったけど……あと高い玉露はドロッとしてるんだね」
唯が実に真面目そうな顔をしてそうしゃべった、本人は真剣なのかもしれない。
「そっそれは……」
むぎが困ったような顔をする。
「でね。部屋の前まで持って来たらさ、なんか変な声がするんだよ。そんでちょっとだけ覗いちゃったんだよ」
ゴクッとみんなの喉が鳴る。
「すごい腰動かしてさ。憂が気持ちいいのか苦しいのかわかんない顔して。すっごい声で」
そして一息つくようにカップに口を付け。
「憂があんな表情してとあんな声出してるの初めて見たよ〜」
と言って、はぁぁ〜〜とため息をついた。
「そっかそっか、う〜んそんなことがね〜」
律が理解したような顔をするが顔が少し赤い
部の中で一番に元気一杯キャラの律だがストレートな性の話にはやや弱かった。
「最近彼と遊んでばっかりなんだよね」
顔は笑顔だがどこか寂しげな表情だ。
「ふ〜ん…… つまり、唯は何だかんだ言って結局は寂しいってことなんだ?」
澪が優しい顔で唯に微笑みかける。
唯は少し困ったような顔をした後、こくりと小さく頷いた。
「付き合い始めってさ、一緒にいるのがすごい楽しくてさ、抱き合うとすごい幸せな気分
になるんだよね」
そしてコホンと咳払いをしてから
「落ち着いたらまた唯の面倒をしっかり見てくれる、いつもの憂ちゃんになるよ」
と諭すように言った。
「そうかな? そうだよね」
唯がそう言うと、みんながにっこりとした顔で
「うんうん」
とうなずいた。
あのおね〜ちゃん想いな憂が姉を見捨てて彼氏を選ぶとは思えない、
彼女ならきっと両方を幸せにする、そんな選択をするだろう。
軽音部のメンバーもそれを疑ってはいなかった。
「そっかそっか…… ふぃぃ〜〜」
一度元気を取り戻すがまたすぐにしぼんでしまった。
澪がやれやれと言った顔ををしながら
「ダメか」
とぼやいた。
唯はへなへなとテーブルにへばりつくと
「彼氏ってどんな感じなんだろう? エッチって気持ちいいのかな?」
ぽつりとつぶやいた。そう言う唯の顔は悩める乙女の顔であった。
「そんなに気になるなら作って見ればいいんじゃないかな」
律がそう言うと。
「そうですよね、唯先輩ならきっと作れますよ」
そして改めてみんなの視線が唯に集まりその外見をまじまじと見る。
明るい茶系の艶やかなセミロングのヘアーは彼女の明るい性格
をよくあらわしている。
くりくりとした大きな瞳をした可愛らしいたれ目は
見ているだけで幸せな気分になってしまいそうだ。
肌は健康的な白で、若いだけでなく彼女が生き生きとした生命力にあふれる
女性であることを示している、胸はやや控えめであるが十分に男性の目と手を楽しませることが
出来るであろう可愛いお椀のようなバストである。
普段は制服に隠れているが実は唯のウエストは実に魅力的だ。
いくら食べても太らないと自身で言い切るその体質は彼女の基礎代謝の高さ故なのだが
その腹部には余分な肉はない、そしてその代謝を支えているのが彼女の大腿だ。
黒のタイツに包まれたそこはむっちりと太い。
その部分が太いのは女性の身体の特徴で、太いフトモモは赤ちゃんの重さを支えるためだ。
しっかりしているほどお腹が大きくなっても負担が軽い。
蜂のようにくびれたウエストに対し骨盤が収まってる腰は大きく悩ましげなボリュームがあった。
彼女は所謂、安産型と呼ばれる体型をしていた。
健康な男性なら彼女が子種を種付けするには最高の肉体をしていることに
本能で気が付くであろう。
そして彼女の、ついなんでも許したくなるような、可愛い笑顔を
眺めいていると、男ならそのお腹を大きくしてみたいと言う欲望がむくむくと湧き上がってくるだろう。
唯は甘すぎる蜂蜜のような濃密なエロティズムをその身体に隠すように内包している。
しかしそれは実際に、唯を剥いて抱いて味わって初めてわかる”女”の味わいである。
一見するだけなら唯はちょっと可愛い普通の女の子であった。
唯はにっこりと微笑むと
「やっぱり彼氏出来ちゃうかな?告白とか怖くて出来ないけど、優しくて
頭が良くてスポーツも出来て家がお金持ちの人とかになるかな?」
そのセリフでみんなの目が点になる。
しばしの沈黙の後。
「さっさあ…… よくわかんないけど唯の彼氏ならDQNにちょっと毛が生えたくらいじゃない?」
律がぼそりと言うと
「ひどい! 確かに憂ほどじゃないけど、私だって頑張れば良い彼できるよ〜」
大きな瞳に涙を蓄えながら唯が抗議した。
「そう言うことならお見合いコンテストしかないわね」
突然横から声が響く、みんなの視線は一斉にその声の主に向けられる。
視線の先には一人静かにお茶をすすっていた、
軽音部顧問の山○さわこ先生こと、さわちゃんがいた。
「お見合いコンテスト〜?」
その場にいたメンバーの声がぴったりとハモる、変なところでもリズム感はばっちりの
軽音部の面々。
「そうよ、唯ちゃんの彼氏を募集して素敵な思い出を作るのよ」
「ええ〜! でもでもお付き合いとかよくわからないし、やっぱり普通に文通とかから」
急な展開に唯は思わず慌ててしまう。
「わかってないわね〜唯ちゃんの性格じゃ、まず最初の一歩を踏み出せないわね」
「そっそうかな〜?」
その場にいた人間の大半がそうかもしれないと思ったのだが
口に出すものはいない。
「そうよ、大体いまどき文通してるカップルはいないわよ」
確かに唯には少し普通の娘よりのんびりしている所がある。
世間一般の常識とはややずれた認識をしている事も少なくない、
そう言う意味では悪い男に引っかからないかと心配にもなる。
「コンテスト…… 意外にいいアイデアかもな」
澪が腕を組みながらつぶやく。
「そうですね〜学園祭で他校の男子の方々もいっぱい来てましたし。
唯ちゃんは結構人気があるみたいです。参加者は集まるかもしれませんね〜」
紬がのんびりと喋ったセリフに唯がピクンッと反応する。
「そっか〜確かに唯一人じゃ心配だもんな。出来た人が彼になればいいけど
そうじゃないやつだっているもんな〜」
律がしみじみと言った。
「まずみんなであまり変な男がいなさそうな所で参加者を募るのよ。
あんまり派手に宣伝しないでね」
さわちゃんが得意そうに指を立てる。
「しかる後に参加者から比較的感じが良くてしっかりとしたお付き合いを
できそうな男の子を選別する」
みんな黙ってしばらく考え込む、最初に口を開いたのは最年少の梓だった。
「良い…… と思います。このままじゃ練習もできないですし。
唯先輩一人で頑張るよりみんなで協力したほうがきっと良い結果になりますよ」
みんなが目を見合わせる。
「よ〜し。唯の彼氏ゲット大作戦、いっちょやったるか!!」
律が号令をかけると
「お〜〜!!」
とこぶしを突き上げた。
唯が涙ぐみながら
「みんな…… ありがと〜」
と言った。
その顔は満ち溢れんばかりの希望に輝いている、
すでに唯の脳内には理想の彼氏が出来ていた。
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